【ALBUM REVIEW】RinaSawayama 『SAWAYAMA』  

Written by. Kentaro Okuyama


Rina Sawayama(リナ・サワヤマ)は自身のアイデンティティ、そして日本への愛を主張し続ける。昨年2019年にはイギリス、ロンドンの大手レーベル「DIRTY HIT」に所属し、その勢いは止まらない。
そんな彼女のデビューアルバム『SAWAYAMA』
前作EP『RINA』に続く今作は、社会に対しての反発、そして自身が抱えた問題について、赤裸々に語られている。
リリースからすでに2週間が経とうとしているが「Pitchfork」では、評価7.7点を獲得し、その他の音楽メディアでも高い評価を受けている。

今作がなぜそこまで高い評価を受けているのだろうか?
その大きな要因は、作品を通した「社会性」の高さにある。

彼女の音楽のほとんどは、人々の悩みやにインスパイアされたものであり、その奥にある社会に向けてのメッセージを提示しているのだ。

現に彼女の日本版公式ツイッターでは、リリース日である4月17日に合わせ本人がアルバム収録曲を1曲1曲解説している。
その解説を見ると、収録曲のほとんどは社会性を持っていることが伺える。

アルバムの前半部分は激しいサウンドでこの世界の「不」に対してのメッセージが多く歌われ
“XS”では資本主義へ対して、
“STFU!”はアジア人に対する差別的行為への批判を激しいサウンドに乗せて歌い上げている。

そしてアルバム4曲目、2000年代のダンスミュージックにインスパイアされた
“Comme de Garcons(Like The Boys)”は、
世の中のネガティブな男性的な目線に反抗したメッセージが含まれていて、
マドンナ的なバックサウンドににメッセージを乗せることで、彼女自身の自信が垣間見えるとともに、新たなポップのスタイルを提示している。

アルバム5曲目の“Akasaka Sad”では、
幼い頃からロンドンと東京を行き来していた彼女の迷いや、孤独感が歌われている。彼女は幼い頃からロンドンに住み、日本にはそれほど馴染みがなかった。
しかし、日本を愛していた彼女にとってはどっちつかずなその状況こそが、彼女を迷わせ、苦しめていたのだろう。
そうした感情を歌い上げ、彼女は『SAWAYAMA』のなかで消化している。

6曲目の“Paradisin’”では、ティーン時代の楽しかった思い出を歌い上げている、
しかしその時に家族との関係がうまくいっていなかった事もこの楽曲を聴けば察することができる。
ここからアルバムは「愛」に対しての彼女の姿勢を多く見せ始める。

7曲目の“Love Me 4 Me”続く8曲目の“Bad Friend”では
自身と他者を愛することについての葛藤を歌い上げたものになっている。
こうしたメッセージを、ジャンルレスに歌い上げることで彼女の音楽は様々な世代に聴かれていることは間違いないだろう。
9曲目までのこのアルバムは、あらゆる角度からの世界に対してのアプローチをしている。それは歌詞の観点からでも、サウンド的な観点からもこの世界に訴えかけていることが伺える。

そうした世の中に対しての「ネガティブ」な感情を歌い上げたアルバム前半部分だったが、後半に向かうにつれて次第にサウンドも激しさを増し、より感情的になっていく。

LADY GAGA主演を務めた『A STAR IS BORN』にインスパイアされた10曲目の“Who’s Gonna Save U Now”では、他者に対して抱いていた思いと、自分が変えられなかった人のことを赤裸々に歌い上げている。

彼女が持っている日本のアイデンティティ、そしてロンドンに移住し外から見た日本の姿、外国人が日本に対して持っている姿勢に疑問を抱いていることを歌っている11曲目の“Tokyo LoveHotel”
東京に関連する楽曲が本作に多くみられるのもこうした思いから楽曲が多く制作されたのだろう。

12曲目の“ Chosen Family”はセクシャリティの問題を抱えた人々に向けた曲、そして今も根強くある性差別に対するメッセージソングになっている。
自信もパンセクシャルをカミングアウトし、活動する中でそういった問題を抱えた人々が心置きなく過ごせる世の中になるよう彼女自身がその先頭に立ってメッセージを発信し続けることでその見方や接し方は大きく変わっていくだろう。

そしてアルバムは“Snakeskin”“Tokyo Takeover”とアート性、メッセージ性ともに今作の絶頂に達し終わりを迎える。
自身が幼い頃から抱えたコンプレックス、それは人種の面から見てもセクシャリティな面から見ても彼女を苦しめていたのだろう。
しかし、彼女は音楽に出会い確実にそのコンプレックスを脱ぎ捨てそれをアートに変えている。


“トラウマを脱ぎ捨てて、そこからアートを作り、音楽業界に商品化され、リスナーの消費活動に委ねられるという、このアルバムのプロセスが自分の蛇皮のように感じていた。
このアルバムは、人生で与えられたトラウマや悩みに対して我々がどうやって向き合えばいいかについて語っていると同時に、自らの歴史を探究し確固たる強さを得るための招待状でもあるんです。”


我々が抱えたトラウマやコンプレックス、それを愛に変えて自信につなげていく。自分と周りを愛することでそれは世界を愛することにも繋がっていくと、このアルバムを通して聴けば感じることができる。
そういった姿勢を様々な世代に親しまれるサウンドアプローチで全力で表現している『SAWAYAMA』は現在も閉鎖感や孤独感で多く悩んでいる人たちにとっては背中を押してくれるようなアルバムになった。
日本と世界を跨ぎ、飛躍し続ける彼女の音楽は今後の日本においてもいい影響を与えてくれるに違いないと感じれる1枚だった。



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