【Interview】「謝ることが少なくなったと感じているの」壁を乗り越え変わったPhoebe Bridgersの新たな姿

アメリカ、ロサンゼルス出身のミュージシャンPhobe Bridgers(フィービー・ブリジャーズ)

6月19日にリリースを控えた通算2作目となるスタジオアルバム『Punisher』を前に、NME のインタビューに応じたPhoebe Bridgers。
音楽性、生活に至るまで、彼女は一体何を語ったのだろうか?


Phoebe Bridgersの音楽には、夢や幽霊、占星術など迷信的な要素が多く含まれている。

暴力やと優しさ、ロマンスと恐怖といった矛盾に満ちた作品で、前作よりも大胆でストレートなサウンドが特徴のPhoebe Bridgersの2作目となるスタジオアルバム『Punisher』がリリースされようとしている。

2017年にリリースされた彼女のデビュー作である『Stranger In The Alps』では、真っ直ぐなフォークソングと優しいメロディーを奏でていたが、
今作はより土っぽく、しばしラウドなサウンドが鳴り響いている。

ドラムの音が大きくなるにつれ、彼女の声もまた囁きから悲鳴へと変わっていく。
エネルギッシュなサウンドが光る今作『Punisher』収録曲
“Kyoto”では、彼女はある人物に対して警告を発している。


“I’m gonna kill you/I don’t for give you
お前を殺してやる/お前を許さない

Phobe Bridgers
“Kyoto”

ストレートなサウンドが織りなす『Punisher』は、彼女の刺さるような率直さがある。
今作のアルバムタイトルでさえ『話すのを止めるタイミングがわからない人』を犠牲にしたジョークである。
これは、彼女の現在と未来を完全にコントロールしているサウンドであるということである。


“自分の身に何かが起こったときに、すぐに曲を書くことはできないの
書いたとしても、それはかなりひどいものになってしまう。
でも、何かを書いているときに大袈裟に書いたとしても、
後になればそうではなかったことに気づくの。”


そんな彼女の不安定なサウンドは、決してヘヴィなサウンドに打ち負かされることはない。
“Graceland Too”はファーストアルバムのフォークに最も近いもので、
Phoebe Bridgersがアルバム制作と同時にすぐに取り掛かった楽曲だ。
これは、自分の直感に従うという彼女の信念がうまく反映されている。


“I took MDMA with some friends,
何人かの友人と一緒にMDMAを飲んだんだ

and realised that you keep the decisions you make on it for the rest of time. It’s like therapy; a rush of serotonin.
セラピーのようなものだよ、セロトニンが出てくる”

Phoebe Bridgers
“Graceland Too”

NME
Credit: Frank Ockenfels

『Punisher』は鮮やかで爽快な歌詞の数々に満ちている。
前述した楽曲“Kyoto”は、アルバムの先行配信として2番目にリリースされた楽曲で、彼女のリリース作品の中で最もアップビートな曲である。
曲中の「恐ろしい人」とは一体だれなのか、
彼女はこう答えた。


“これが本当なのかどうなのかはわからないけど、
彼は自分で言ったの。ライアンアダムスは、本当に恐ろしい人よ”


2019年、Phoebe Bridgersは元妻で俳優、歌手のMandy Moore(マンディ・ムーア)を含む数人の女性の一人として、シンガーソングライターでプロデューサーのRyan Adams(ライアン・アダムス)に対して、何年にもわたる感情的な嫌がらせやセクハラを訴え、
後にニューヨークタイムズ紙で「14歳の少女と露骨なオンラインコミュニケーションを交わしていた」と報じられた。

アダムスは2015年に自身のレーベル「Pax-Am」からPhoebe BridgersのファーストEP『Killer』をリリースし、2人は恋愛関係をスタートさせた。


“彼の周りには神話があった。”


と彼女は同紙に語り、彼がテキストメッセージで彼女と親交を深め、交際をスタートさせた最初の1週間で結婚について言及され続けた。
しかし、数週間後には彼らの「短い、合意の上での浮気」になってしまった。

アダムスは、感情的に虐待的になり、二人が破局したあとのツアーに彼女を招待したあと、物事を強要したという。


“彼にホテルの部屋に来るように言われたの。
私が2階に上がると彼は全裸だったわ。”


アダムスは、前述した全ての疑惑を否定し、それらを「非常に深刻で、個人的または仕事上の失望、不満を持った個人によるうめき声」
と語った。

NME
Credit: Frank Ockenfels

Phoebe Bridgersが初期に活躍していたとき、コメンテーターたちは彼女を男性アーティストと並べることが多かった。
大胆不敵な彼女のセカンドアルバム『Punisher』では、
彼女の心を揺さぶるリリシズム、神秘的な楽曲の数々が収録されており、誰も彼女の影響を褒め称えることで彼女を正当化する必要性は感じないであろう。

しかしPhoebe Bridgers自身は、彼女の音楽にインスピレーションを与えてくれた人たちに尊敬の意を表すをやめない。
ロックダウン中の趣味の話をしたとき、
BBCの「Normal People」を見て、テレビシリーズの原作となったサリー・ルーニーの小説を気に入った。
テレビシリーズの主演であるPaul Mescal(ポール・メスカル)はインスタグラムで彼女をフォローし、友人に追加しているという。

その1週間後、彼女はショーを終えたあと、メスカルにニューアルバムを送り、ファッション誌での自身初の特集のためにインスタグラム上で彼にインタビューしている様子を共有している。

この混沌とした静かな時間の中でも、彼女はまたFiona Apple(フィオナ・アップル)の最新アルバム『Fetch The Bolt Cutters』を聴いている。


“この作品は本当に爽快で恐ろしいほど聴きごたえがある。
このアルバムを聴くときの感覚は、私が10代の時は持っていなかった感覚なの”


Fiona Appleもまた、キャリアを通して男性アーティストやエグゼクティブ、パートナーの判断やコントロールから自由になったアーティストの一人だ。

SNS上でPhoebe Bridgers「※Industry Plant」と呼ばれ、
Billie Eilishと同じような扱いを受けている。
なぜ、成功している若い女性アーティストがこのように標的にされているのだろうか?
※「Industry Plant」:自然にヒットしたように見せてレーベルの後押しを受けてヒットしたアーティストのこと

(参考文献:FNMNL)


“みんなはそれを扱うことができないの。
それを言ったら、ザ・ストロークスだって「Industry Plant」でしょ!
少なくとも音楽の世界では誰もが知っているけど、
それが彼らに劣等感を感じさせたことは一度もないの、
それって非常識な2つの基準だよ。
裕福な両親がいれば、女性だったら音楽を作ることは許されないけど、男性だったら許される。
その基準だったら白人はみんな「Industry Plant」よ。”


Billie Eilishのようにメジャーレーベルと契約したポップスターであるにも関わらず、Eilishは「Industry Plant」とは程遠い存在であり、自分のサウンドとビジョンをコントロールしている。


“それが彼女の芸術なの”


と、Phoebe Bridgersは語る。
しかし、Phoebe BridgersBillie EilishFiona Appleといったアーティストの存在があるにも関わらず、
音楽業界の女性は、ネット上のアンチと、舞台裏の人々の両方から2つの攻撃を受けていると感じる。
Phoebe Bridgersはなぜ、音楽業界で、適切な※「#Me Too ムーヴメント」が起きていないと感じるのだろうか?
※「#Me Tooムーヴメント」:「私も」を意味する英語にハッシュタグ(#)を付したSNS用語。 セクシャルハラスメントや性的暴行の被害体験を告白・共有する際にソーシャル・ネットワーキング・サービスで使用される。

参考文献:wikipedia

彼女はその答えをビジネスという面に限定している。


“誰かのせいだとは思わないわ。
映画業界では、多くの人が、脚本家にいくら払っているのか、
プロダクションマネージャーがどれだけ関わっているのかを知っているの。
音楽業界の場合は、どのグループももっと孤立しているの。
それはパワーダイナミックスや#Me Tooで起こることもあるだろうし、一人一人の人間に対してこきを使っているだけのマネージャーでも起こる。
あるいは、契約して、媚びて、作品をリリースしないレーベルとか。
何故こんなことになると思う?
人々がお互いに対話しないからだよ。”


この沈黙は長年にわたり、彼女に影響を与えてきた。
彼女がアダムスとの出来事を超えて前に進むことができるようになるには、20代前半のほとんどの時間を費やした。(現在25歳)


“ライアンに出会った時は、ほとんど音楽業界の人を知らなかった。
でもその後、たくさんの人に出会って「彼はゴミみたいな人だ」と言われたの。
私が20歳の時にはそんなことはなかったし、多くの人が今でもそうなのよ”


NME
Credit: Frank Ockenfels

Phoebe Bridgersは『Punisher』で、感情的にも現実的にも自分の手でプロジェクトを進めてきた。
彼女はあるインタビュアーに対して、「私の人生の中でグロい男を排除することに成功した」と語ったことがあるが、
これは彼女が「最高の人」と呼ぶ、
Snail MailSoccer MommyJapanese Breakfastなどの女性アーティストたちから得たサポートについて言及したものだ。


“かなり早い段階でなんとかできたの。
ライアンと私に創造的な繋がりはなかった。
素晴らしい人たちと仕事をしていても、ひどいところを見つけてしまうという問題に遭遇したことがなかったから、私はラッキーだった。”


長年にわたって、Phoebe Bridgersは自分に悪びれ、自分の価値を伝えてくれる男性に縮こまってしまう傾向があると話した。


“私は間違いなく、自分から謝らなくていいと思っているわ。
昔に比べると、謝ることが少なくなったと感じているの。
でも、それは私が自意識過剰になっているというわけではないの。”


NME
Credit: Frank Ockenfels

デビューアルバム『Stranger In The Alps』で彼女は、フォークの新しい波を切り開いた。
彼女は『死』というテーマを、子守唄のように聴かせることができた。


“We talk until we think we might just kill ourselves
私たちは自らの命を絶つことまで考えている”

Phoebe Bridgers
“Funeral”

“All the skeletons you hide / Show me yours I’ll show you mine”
あなたが隠しているものを見せて、私のも見せるから

Phoebe Bridgers
“Savior Complex”

Phoebe Bridgersのお気に入りの『Punisher』の2曲目は、この二つの要素をうまく反映している。
“Moon Song”は、剥き出しのピアノと彼女のボーカルにスポットをあてた楽曲で、聴いているこちらの心が痛むほど傷ついた曲だ。
これまでの彼女の中でも最も印象的な曲だと言えるだろう。


“シンプルな曲を書くということは、より挑戦的なことなの”


数年の間に彼女が直面した壁を乗り越えて自分自身を引っ張っていく強さを見つけてから何が変わったのかと、尋ねられた時に、
Phobe Bridgersは、混沌とした世界に身を乗り出すことを学び、
目の前の世界の奇妙さを受け入れるようになったと語っている。

これは大きなことだけでなく、小さなことにでも当てはまる。
いきなり黒猫が現れたり、救急車の音が鳴り止まない現状で彼女は以下のように語っている。


“世界が機能していることを知れてよかった”


NME
Credit: Frank Ockenfels

Phoebe Bridgersのセカンドアルバム『Punisher』は6月19日にリリース予定だ。

インタビュー全文はこちらから


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