【リリース直前】THE1975ニューアルバムを目前に控えた彼らの思いとは

Written by. Kentaro Okuyama
Referenced by. the guardian shorturl.at/lozY8


昨年10月にリリースされた、THE 1975“Frail State of Mind”は、重い感情を幻想的なサウンドにのせて表現されここ数年での彼らの多様性の変化を感じられる1曲である。
現代の音楽シーンにおいて、これほどまで社会性を持ったバンドはあっただろうか?
4枚目のアルバムスタジオアルバム『Notes In Conditional Form』のリリースが5月22日に迫るなか、キャリアの絶頂期を迎えるTHE 1975のフロントマンマットヒーリーの考えに迫っていく。

『Notes In Conditional Form』

マットヒーリー(以下マット)はコロナウイルスによるロックダウンが迫ってきた時に、
自分の居場所を必死に模索していた。
彼の行動には音楽製作以外に目的がないのである。
そして、THE 1975のドラマー兼プロデューサーのGeorge Daniel(ジョージダニエル)と共に、
バンドの自宅スタジオに直行したという。
製作を終えた彼らは、また新たなTHE 1975の楽曲を作り始めた。

マットほど社会に敏感でそれを自身のソングライティングに落とし込めている人はなかなか見当たらないだろう。
そんな彼も、コロナの渦中で確実に足を踏み始めている。

2年前にリリースされ、イギリスのトップチャートを記録し、
ブリティッシュアワードでは最優秀アルバム賞に選ばれた前作
『A Brief Inquiry Into Online Relationships』に続く作品として、
22曲の楽曲から構成される今作『Notes In Conditional Form』は、
4カ国、15のスタジオで1年7ヶ月の時間をかけて制作された。

今作にはFKA Twigs(エフケーエーツイッグス)、
Phoebe Bridgers(フィービーブリジャーズ)とのデュエットに加え、
今作のオープニングを飾るのは環境活動家として活動するGreta Thunberg(グレタトゥーンベリ)によるメッセージ、
そして今から30年前にマットの父が書いた曲などが収録され、THE 1975としてキャリア最高傑作になっているのは間違いないだろう。

今作のテーマは
“不安、暴力、不可能な美しさ”だとマットは言う。


“このアルバムは前作と同じ問いかけをしているんだ。
脚光を浴びることって奇妙なことなのか?少しだけ怖いんだ。
それが表に出た時に正当化されたって感じられる。”


我々と同じくマット自身もこのアルバムがTHE 1975のベストアルバムだと思っている。
ラジオ向けの楽曲とは違い、包み隠さず表現する彼らの音楽は彼らの評価を倍増させている。
このスタイルはフロントマンであるマットから飛び火してバンドのサウンドへと落とし込んでいる。
彼の心の中にある不安定な気持ちが、
ある人にとってはムードボードに、またある人にとっては口うるさい人間というように彼を分裂的な人間にしているのである。


“俺はアボガドじゃない
誰しもが俺のことを素晴らしいと思っているわけなんてないんだ”


しかしこれほど広大なアルバムを作るのに基本的な計画はなかったというマット。


“こないだ、ブライアンイーノとこの事について話していたんだ。
俺は17年間同じバンドをやっている。作品を作って、一緒に住んでる。
だから大胆になろうと努力しているんじゃなくて、退屈しないようにしているんだ”


この言葉の通り、アルバムのラストを飾る楽曲“Guys”はチェシャーのウィルズムロー高校で結成したバンドに捧げる青春のラブソングだ。
今作はマッティーが自身の振り返ることにした最初のアルバムだ。
今年4月に31歳になったマットにとって、1つの区切りになっている。



“このアルバムには30代の人生についての話がたくさん出てくるんだ
LCD Soundsystemの『Like All My Friends』みたいに、自分自身の人生を振り返って自分のシーンを見ているんだ”


これは彼が自身の過去の選択を反省するという意味でもあるのだ。


“20代は本当にカオスだったんだ。まともな生活を送れていなかったから学んでいなかったことがたくさんあった。
俺はまだまだ未熟なんだ。
去年の夏にモデルのガブリエラ・ブルックスと別れたこともあるし、
「なんで自分のキャリアにここまでこだわっているんだろう」
って自問自答することもあるよ。でももうこの考えは終わりにしたいんだ。

もう葛藤したくない”


最近マットは政治的な発言を発言し、政治についての詳細を求めている。
昨年夏にリリースされた“THE 1975”“People”では社会の問題に触れ、全てのことに対して立場をとることを許された。
火花のように意見を飛ばすマットだが、いきすぎた発言により疑念をもたれることも少なくない。
このアルバムの中で最も興味深いラインは“Roadkill”の歌詞だ。


“選挙中に黙っていたら最悪な目にあった、でもそれがフェアなのかもな
でも俺は忙しいんだ”



この歌詞についてマットは以下のように語る


“正直言ってかなり幻滅したよ。俺はジェレミーコービンも好きじゃないし、ボリスジョンソンも好きじゃないんだ、だからどちらも信用していなかった。
つまり言いたいのは、どうなるか知ってるよ、でも俺は俺のやるべきことをやってる、だから他の誰かが始めろってことなんだ”

“君がもし何かを作りたいのなら、自分の意見を発言することを覚悟しなきゃいけない。
多分今後は、戦後みたいな感じになると思う。
だから表面的なことで世界が変わるとは思えないんだ。”


彼のこのような発言は様々な反感を買うが、彼自身が鋭い批評家になっていることも事実であろう。
彼は自分自身を問いただすために、曲中の半分は事実ベース、半分は彼自身の自論ベースでメッセージを発信している。
彼の正直さと、自己認識へのこだわり、
作品を作る上で注意しなければならないのはこれらを考えて制作しないとそれはただの見せかけになってしまうことを認識することだ。


“みんなを愛おしく感じて、過剰にそういった曲をシェアする人にはかなり疲れるね。
自己否定が本物ならいいんだけどね、演技的なものは迷惑なんだ
もし人々が、あなたが人々の視線をキュレーションしているように感じたら彼らはこう思うんだ。
「ふざけんな、本当のことを教えてくれ」”


最近では多くのパーソナリティキュレーションがオンライン上で行われている。
マットは恥ずかしさを感じることなく、インターネット文化を考察できる数少ないソングライターの1人である。


“俺の音楽のテーマは、コミュニケーションと対話だ。
神、天国、地獄、輪廻転生、これらは全部素晴らしい考えだと思う。
でも、俺たちが実際にできるのはこれらについて考えたり話すことだけなんだ。
俺たちがどうやってそうするのか、なぜそうするのか、それだけに関心があるんだ”


今、私たちはコロナの影響で今までにないようなオンライン上の生活を送っている。
マットはこの変化を良い変化だと捉えている。


“既存の人間関係の延長線上にあるインターネットは理想的な、元々のアイデアに近づいてきてる。
インターネットは俺たちになんでも出来る自由を与えてくれた大規模な社会実験で、俺たちの怒りや不満を吐き出すための世界ではない、そのために発明されたのではないんだ”


インターネットの変化がそうであるように、マットもまた音楽がどう変わっていくのかを考えてきた。
コロナ危機の前には、多くのアーティストがより環境的に持続可能な方法で、
ライブミュージックを築こうと考えていた。
現在のTHE 1975のショーには価値がなくなってきているというマットは、
業界のやり方が彼らの手を押し付けていると語る。


“もう終わったんだ
俺たちは世界を変える必要がある。
外からドアを蹴られるんじゃなくて、内側からドアを蹴るんだ。
俺たちや、デュアリパ、アレックスターナーみたいな人たちによって内側から蹴るんだ。
従来のやり方を犠牲にするんだ、なぜならそれはもう機能していないからな”


確かに今は通用しないかもしれない。
THE 1975のメジャーデビューに伴う、ハードセールスも止まってしまった。
ライブやテレビ出演、看板広告はもうない。
『Notes In Conditional Form』はネット上で公開されるだけで、そのメリットに今後の良し悪しがかかっている。マットはそれを受け入れた。


“俺にとって大事なことは、この作品が別の時期にリリースされたように感じてもらうことだ。
今、人々が喜びを感じているのは、散歩に行ったり、母親に会ったりする基本的なことだ。
だから今は作品を聴いて踊るという行為が注目されなくなってる。
俺はひとつの時代の終わりと、新しい時代に突入するという考えに取り憑かれているし、そう思う。俺たちは新たな時代に入るんだ”

THE 1975の最新アルバム『Notes In Conditional Form』5月22日にリリースされる。


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